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新座動物総合医療センター

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腫瘍科

腫瘍とは?

本来自分の体内にある細胞が、自律的(勝手に)無目的かつ過剰に増殖する状態と定義されています。腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍に分けることができ、その違いは悪性腫瘍の場合は「転移」をすることが特徴であり、良性腫瘍で転移することはありません。

がんとは何か

一般的に「がん」=悪性腫瘍のことをさします。
悪性腫瘍は、元となっている細胞の由来によって分類されており、固形がん、独立円形細胞の2つに分類され、固形がんはさらに癌(がん)と肉腫(にくしゅ)に分類されます。 悪性腫瘍の分類によって、治療法が大きく変わるため、どこに分類される「がん」なのか診断することはとても重要になります。

代表的な腫瘍疾患

  • 乳腺腫瘍

    乳腺にできる腫瘍で、ワンちゃんでは50%の子が良性、残り50%の子が悪性といわれています。
    一方ネコちゃんの場合、乳腺にできた腫瘍は80~90%の子が悪性です。
    悪性度が高いものを放置しておくと、肺など他の臓器へ転移したり、腫瘍が細菌感染を起こし、
    痛みを伴う可能性があります。
    悪性のものでもしっかり切除すれば十分対応できる腫瘍です。
    月に1回は自宅でも乳腺まわりを触っていただき、もし、しこり状のものがあれば診察でチェックしてあげましょう。

  • 肥満細胞腫

    ネコちゃんではあまり多くないですが、ワンちゃんでは皮膚にできる悪性腫瘍の中で一番多い腫瘍です。
    肥満細胞腫のやっかいなところは、見た目が一般的な湿疹と同じように見えたり、
    ただのイボのように見えたりすることもあることです。
    そのため、つい様子を見てしまう時間が長くなりがちな腫瘍でもあります。
    また、肥満細胞腫は、たくさんの炎症を引き起こす物質を出すため、
    皮膚が赤くなったり、ひどい場合嘔吐や血便など消化器症状が出ることもあります。
    皮膚に気になる症状があれば、早めの診察を受けてチェックしてあげましょう。

  • リンパ腫

    血液のがんの1つで、リンパ球が腫瘍化してしまいます。
    血液のがんなので全身に転移しやすい性質を持っています。
    そのため、通常は手術や放射線治療ではなく、抗がん剤治療が選択されます。
    早期に発見し、適切な治療を行えば、十分生活の質を高め、寿命を延ばすことが可能な腫瘍です。
    症状は、体の表面のリンパ節が腫れてくるなどの典型的なものから、元気食欲の低下、嘔吐下痢など様々あります。
    気になる症状があればなるべく早く診察を受けましょう。

がんの治療

腫瘍に対する治療は目的によって大きく分けられ、完治を目的とする根治的治療、症状を和らげることを目的とする緩和治療、腫瘍の発生や再発、転移などを予防する予防的治療があります。
それぞれの患者さんの状態によって、どこを目指した治療を行っていくかについて治療を始める前にご相談をしながら行います。

がんの治療法は現在、様々な治療法が出て来てはいますが、確立されている治療法としては外科療法、化学療法、放射線療法が腫瘍の3大治療といわれており、現在も腫瘍に対する治療の主軸を担っています。

腫瘍内科

腫瘍内科療法はいわゆる「抗がん剤治療」です。
抗がん剤と聞くと、人医療で知られている嘔吐や脱毛などの副作用が重篤にでてしまうイメージをお持ちの方が多いと思います。しかし、実際の動物の抗がん剤治療は、生活の質に影響を及ぼさずに生活の質を上げるために治療を行っていくことを目標としています。

手術や放射線治療などの局所療法に対し、抗がん剤治療は全身療法になります。そのため、あらゆる腫瘍に対して行うことのできる治療ではありますが、腫瘍の種類によって治療の効果は異なります。獣医療の発展とともに動物たちの高齢化も進んでおり、人と同様に動物たちも高齢になればなるほど腫瘍になりやすくなります。

抗がん剤の副作用について

抗がん剤は良く知られているように、腫瘍細胞だけでなく、正常細胞にも作用し抗腫瘍効果だけではなく、副作用を起こしてしまう場合があります。
人医療に比べると、犬や猫で使用する抗がん剤の量は少ない量に規定されており、実際に、動物によって必要な抗がん剤の量は異なってきます。最初に抗がん剤を投与する際は、「その子にとって適切な抗がん剤の量」がわかっていないため、初回はすでに決まっている推奨量で開始します。

抗がん剤で完治できるのか?

抗がん剤治療は手術で腫瘍を取り除く場合と比べると、体から腫瘍を無くすという意味では劣ってしまいます。抗がん剤が効きやすいリンパ腫などでは、抗がん剤治療のみで完治できる時もあります。上記のように、抗がん剤治療が適応になるケースは様々であり、術後の補助療法として完治を目指していくのか、腫瘍が大きすぎて手術で摘出が困難なため腫瘍の増大を少しでも抑えるために緩和を目的として治療するのかによっても異なりますので、残念ながら一言で完治できるとは言えません。一方で抗がん剤が効きにくいと言われている腫瘍でも、完治に近い「寛解(症状が消失した状態)」にまで治療できることもあります。

「がん」という病気に立ち向かうには、色々な不安がつきものです。当院では飼い主様の不安を一つでも多く取り除くため、しっかりとした説明を心がけています。
どんな「がん」の疑いがあり、それを診断するためにはどの検査が必要で、何がわかるのか。

さらに、必要な治療法、全般にかかる費用、そして長期的な治療計画など、すべてを説明し、納得していただかなければがんという病気に立ち向かうことはできません。獣医師だけでなく、飼い主様の積極的な治療への参加と、自宅での愛情あるケアがなければ治療は成立しません。

何かお聞きになりたいことがあれば、どんなことでも遠慮なくご質問ください。そして、一緒に頑張っていきましょう。