肥満細胞腫について
~しこりを見つけたら、まず知っておきたいこと~
肥満細胞腫ってどんな病気?
肥満細胞は、アレルギーや炎症に関わる細胞で、皮膚や消化管などに存在しています。
この肥満細胞が腫瘍(がん)化したものを肥満細胞腫といいます。肥満細胞腫は犬の皮膚腫瘍の中では比較的よくみられる腫瘍で、良性に近いものから悪性度の高いものまで様々あり、見た目だけでは判断できません。そのため、細胞診検査(FNA)や病理検査で悪性度を判断することが重要になります。
また肥満細胞腫ができる原因としては遺伝子や体質、年齢など様々考えられています。
どんな症状が起こる?
肥満細胞かでは「ヒスタミン」という物質が放出されることで、皮膚や体全体に様々な症状がでることがあります。
- 皮膚にしこりがある
- 大きさが変わる
- 赤みや腫れ
- かゆみ
- 出血
- 嘔吐
- 食欲低下
治療について
最も一般的な治療は「外科手術」です。
また、悪性度や転移の有無によっては
- 抗がん剤
- 分子標的薬
- 放射線治療
などを追加することがあります。
また、症状を和らげるために抗ヒスタミン薬などを使用することもあります。
参考文献
- Takahashi, Tomoko, et al. "Visceral mast cell tumors in dogs: 10 cases (1982–1997)." Journal of the American Veterinary Medical Association 216.2 (2000): 222-226.
- Patnaik, A. K., W. J. Ehler, and E. G. MacEwen. "Canine cutaneous mast cell tumor:morphologic grading and survival time in 83 dogs." Veterinary pathology 21.5 (1984): 469-474.
- Kiupel, Matti, et al. "Proposal of a 2-tier histologic grading system for canine cutaneousmast cell tumors to more accurately predict biological behavior." Veterinary pathology 48.1 (2011): 147-155.
症例
- 猫、メス、5歳
- 左頬にできものがあるとのことで来院されました。
細胞診検査を行ったところ、肥満細胞腫が疑われたため外科手術で摘出し、病理検査の結果で肥満細胞腫と診断されました。
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| 肥満細胞腫の増殖像 |
リンパ腫について
リンパ腫ってどんな病気?
リンパ腫は、犬や猫で比較的よくみられる「血液のがん」の一種です。
リンパ球という免疫に関わる細胞が増殖し腫瘍化したもので、リンパ節や消化器、皮膚など様々な場所に発生します。リンパ腫の種類によっては症状や治療法、進行スピード、予後が異なるため、早期発見が重要です。
リンパ腫ができる原因としては様々考えられますが、遺伝的な要素も関与していることが報告されています。
どんな症状が起こる?
リンパ腫は、できる場所や細胞のタイプによって様々な症状が起こります。
- リンパ節が腫れる
- 元気がない
- 食欲低下
- 下痢
- 嘔吐
- 呼吸が苦しそう
治療について
治療はリンパ腫の種類やその子の体調に合わせて変わります。
主な治療としては、
- 抗がん剤治療
- ステロイド(抗炎症薬)の投与
- 外科手術
- 放射線治療
参考文献
- Zandvliet, M. "Canine lymphoma: a review." Veterinary Quarterly 36.2 (2016): 76-104.
- Ettinger, Susan N. "Principles of treatment for canine lymphoma." Clinical techniques insmall animal practice 18.2 (2003): 92-97.
- Bennett, Peter, Peter Williamson, and Rosanne Taylor. "Review of canine lymphoma treated with chemotherapy—outcomes and prognostic factors." Veterinary Sciences 10.5 (2023): 342.
- Rocha, Michelle do Carmo Pereira, et al. "Canine mu lticentric lymphoma: diagnostic, treatment, and prognostic insights." Animals 15.3 (2025): 391
症例
- 犬、オス、7歳
- 1カ月前から顎の下あたりが腫れているとのことで来院されました。
診察では、顎の下だけではなく、全身のリンパ節にも腫れが認められ、病理検査の結果、
「多中心性リンパ腫」と診断されました。
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| 体表リンパ節の腫脹 | リンパ芽球の増殖像 |

リンパ節の腫脹
黒色腫(メラノーマ、メラノサイトーマ)
黒色腫(メラノーマ、メラノサイトーマ)は
「メラニン」という色素を作る細胞(メラ ノサイト)が腫瘍化した病気です。
良性をメラノサイトーマ、悪性をメラノーマといいます。
黒っぽい色をしていることが多いですが、必ずしも黒色とは限らず、ピンク色や白っぽい場合もあります。
犬では比較的みられる腫瘍で、口や足先、皮膚などに発生します。特に口や爪の周囲にできるタイプは悪性度が高く、早期に肺やリンパ節に転移する可能性があります。
猫では比較的稀ですが、発生した場所によって注意が必要です。
どんな症状が起こる?
黒色腫は発生した場所によって症状が異なります。
①口にできた場合
- 口臭が強くなる
- よだれが増える
- 出血
- ごはんを食べにくそうにする
②足先・爪周囲にできた場合
- 出血する
- 爪が抜ける
- 歩き方が変
③皮膚の場合
- 黒色のしこりができる
- 出血する
治療について
黒色腫(メラノーマ、メラノサイトーマ)の最も重要な治療は「外科手術」です。しかし、腫瘍を完全に取り切れない場合は、
- 放射線治療
- 抗がん剤治療
- 免疫療法
を行います。
参考文献
- Palma, Stefano Di, et al. "Review on canine oral melanoma: an undervalued authentic genetic model of human oral melanoma?." Veterinary pathology 58.5 (2021): 881-889.
- Hardwick, Laura. "A comparative view on molecular alterations and potential therapeutic strategies for canine oral melanoma." Veterinary sciences 8.11 (2021): 286.
- Pazzi, Paolo, Gerhard Steenkamp, and Anouska J. Rixon. "Treatment of canine oral melanomas: a critical review of the literature." Veterinary Sciences 9.5 (2022): 196.
症例
- 犬、メス、3歳
- トリミングの際に、左後肢の指間にできものがあると言われて来院されました。
細胞診検査を行ったところ、黒色腫が疑われたため外科手術で摘出し、病理検査の結果で肥満細胞腫と診断されました。
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乳腺腫瘍
乳腺腫瘍はその名の通り乳腺組織にできる腫瘍で、犬と猫で非常によくみられる腫瘍の一つです。
犬の乳腺腫瘍の良性と悪性の比率は 50:50 ですが、猫の乳腺腫瘍の場合、約 85%は悪性と言われています。
また乳腺腫瘍はホルモンの影響を受けて発生しやすくなると考えられています。 そのため、若いうちに避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生率を下げることができます。さらに、避妊手術を行うタイミングも非常に重要であり、初回発情前に行った場合は、乳腺腫瘍の発生を約 90%抑えることができるとされています。
どんな症状が起こる?
- お腹や胸にしこりができる
- 赤みやただれ、出血が起こる
治療について
最も重要な市長は「外科手術」です。しかし、悪性度が高い場合や転移がある場合は抗がん剤治療が検討されます。
参考文献
- Polton, Gerry. "Mammary tumours in dogs." Irish Vet J 62.1 (2009): 50-56.
- Hellmén, Eva, et al. "Prognostic factors in canine mammary tumors: a multivariate study of 202 consecutive cases." Veterinary pathology 30.1 (1993): 20-27. Overley, Beth, et al. "Association between ovarihysterectomy and feline mammary
- Overley, Beth, et al. "Association between ovarihysterectomy and feline mammary carcinoma." Journal of veterinary internal medicine 19.4 (2005): 560-563.
症例
- 猫、メス、14歳
- 右側の第3乳頭から出血していることにオーナー様が気付き、来院されました。
触診したところ、右側の第3乳腺と第4乳腺にしこりが確認でき、乳腺腫瘍が疑われました。その後、外科手術で摘出し、病理検査の結果で悪性の乳腺腫瘍と診断されました。
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移行上皮癌
移行上皮癌は、膀胱内の内側を覆っている「移行上皮」から発生する悪性腫瘍です。別名「膀胱癌」と呼ぶこともあります。
犬の尿路系の腫瘍の中では比較的多くみられ、猫では稀ですが発生することがあります。
- 特に中高齢、雌で多くみられる傾向があります。
どんな症状が起こる?
移行上皮癌は膀胱炎症状と非常によく似ています。
- 元気、食欲低下
- 血尿
- 頻尿
- 排尿するときに痛がる
- 尿漏れ
- 排尿姿勢をするが尿がでない
治療について
移行上皮癌は、先ほど述べたように周囲の組織に広がりやすい(浸潤しやすい)という特徴があるため、外科手術での完全切除が困難なことがあります。そのため、
- 抗がん剤
- 放射線治療
を行うことが多いです。
参考文献
- Mutsaers, Anthony J., William R. Widmer, and Deborah W. Knapp. "Canine transitional cell carcinoma." Journal of veterinary internal medicine 17.2 (2003): 136-144.
- Serra, Juan Carlos, Tracy Hill, and Jessica Lawrence. "Canine transitional cell carcinoma: a review of current paradigms." Companion Animal 21.1 (2016): 21-28.
- Fulkerson, Christopher M., and Deborah W. Knapp. "Management of transitional cell carcinoma of the urinary bladder in dogs: a review." The veterinary journal 205.2 (2015): 217-225.
症例
- 犬、去勢オス、12歳
- 尿に血が混じっているとのことで来院されました。
尿検査や超音波検査(エコー検査)を、病理検査から移行上皮癌と診断されました。
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